妥協なき設計で導く、オルトフォンMCのエントリーモデル
「MC型といえば、オルトフォン」という観念は、我が国のレコードファンの間に今も根強く在り続けています。
1950年代末のステレオレコード登場にあわせて開発されたSPUシリーズでは、後に「オルトフォン・タイプ」と呼称される磁気回路(磁石やコイルなどの部品を含む発電機構の総称)が実用化されました。この方式の磁気回路は、オルトフォンのみならず世界中のMC型カートリッジで今なお主流であり、故にSPUは今日のMC型カートリッジの原器となっています。
この「原器」を祖として、オルトフォンは長い歴史の中で数多くのMC型カートリッジを世に送り出してきましたが、その中でも驚異的な生産数を誇るのがMC 10・20・30の名を冠したシリーズです。MC型カートリッジの定番モデルともいわれ、多くの皆様に愛されたこのシリーズは、新たにフラッグシップの「40」を加えたMC Xシリーズへと生まれ変わりました。
新時代の「定番」となるべく誕生したXシリーズは、全モデルに共通して採用した高純度銀線コイル、軽量かつ高精度な十字型アーマチュア、シリーズ初のハニカム天面を備えたMIM成型によるステンレス製フレーム、各モデル専用設計のダンパーゴムを特徴としています。これらの高品位なマテリアルや生産技術は、オルトフォンが歴代のフラッグシップやハイエンドモデルに膨大なコストを投じることで会得してきたノウハウや知見の結晶です。新たにオルトフォンのシンボルとなるXシリーズには、この結晶をコスト度外視で惜しみなく投入し、初めてのMCを検討される方から数多くのMC型カートリッジをご愛用頂いているベテランの皆様に至るまで、より多くの皆様にお楽しみ頂くこととしました。
これはひとえに 、これまでオルトフォンのMC型を幾代にもわたってご愛用下さった皆様へのご恩返しに他なりません。今こそ歴史に残る名機誕生の瞬間です。「X」の鼓動を、お聴き逃しなきよう。
商品説明
MC X10の特徴MC X10は、数多あるオルトフォンMCカートリッジのエントリーモデルにあたります。しかし、その仕様や音づくりに一切の妥協はありません。上位モデルと共通のステンレスフレームや高純度銀線コイルと十字型アーマチュア、高精度な磁気回路はそのまま本機にも採用されており、これに王道のアルミカンチレバーと楕円針をあわせることで新時代のオルトフォン・サウンドを体現する存在となっています。エネルギッシュで豊かな量感をもちながら音抜けや定位感にも優れた万能モデルとして、このMC X10は大いに活躍することでしょう。そしてMC型カートリッジの利点をそのまま具現化したかのような本機の音色は、MC初チャレンジのアナログファンのみならず、再びアナログを楽しみたいベテランの皆様にも十二分にお楽しみ頂けるものです。エントリークラスのMCカートリッジを選ぶなら、迷わずこのMC X10をご指名ください。
Ⅰ.MIMで一体成形された、初採用のハニカム天面とステンレスフレーム
MC Xシリーズでは、本体上部のトッププレート天面にハニカム形状のリブを設けています。このリブとトッププレート、更にはカートリッジの背骨となるフレーム部分までも一体成型とすることで、レコード再生時に発生する不要共振を徹底的に排除しています。そしてこのトッププレートとフレームには、オルトフォンのMC10・20・30シリーズでは史上初めて重質量なステンレス素材を採用しました。カートリッジのメインフレームやハウジングにステンレスを用いることは、ハイエンドモデルのMC XpressionやMC 90Xなどでも行われており、ステンレス特有の質量を伴った高い制振効果によって再生音の定位感向上を得ています。しかし、複雑な形状での加工が難しいこと、様々なトーンアームの対応自重に適合可能な重量に収めることが困難であること、その双方をクリアするためには高コストな特殊加工技術を要することから、これまではハイエンドモデルでの採用に留まりエントリーモデルを含む本シリーズでの採用は見送られていました。しかしMC Xシリーズにおいては、これまでの慣例を打破すべくトッププレートとフレームの素材にステンレスを採用し、その表面には先に述べたハニカム形状のリブを施すことで、剛性を保持しながら軽量化もあわせて実現しました。これにより、先代のMC Qシリーズでは従来型アルミフレームと磁気回路の組み合わせで自重9gであったのに対し、MC Xシリーズでは重質量なステンレスフレームの使用にもかかわらず自重は8.6gとなっています。ちなみに、難削材のステンレスを用いて一体成型のトッププレートとフレームを切削加工で製作し、加えてその表面にハニカムリブを設けるという芸当は、一般的には非常に困難です。そのため、オルトフォンはこのフレーム製作にあたりMIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成型法)と呼ばれる技術を用いました。これは金属粉末に可塑剤を練り合わせ、そのペーストを高精度な金型に射出成型してから脱脂し、最後に加熱することで元の金属粉末を焼結させる製法です。極めて高精度かつ自在な形状の部品を均一に量産できるため、MIMは本シリーズのフレーム製作には最適なやり方であるといえます。オルトフォンがカートリッジ部品の製造にMIMを用いたのはこれが初めてではなく、MC Windfeld/Cadenzaシリーズなど上位モデルのアルミ製サイドハウジングにこの技術を採用しています。高密度と高強度を両立させ、質量までも均一に揃えることが可能なMIMの採用により、カートリッジの音色はまた一段と高解像度かつクリアなものとなりました。この効果を実感してしまえば、新たなMCXシリーズでも採用を望まれるのは自明の理です。MIMによる成型パーツは、極めて高精度な金型を要するなどその性質から高コストとなることを避けられませんが、我々はシリーズ全モデルのフレームを最上位のMC X40と共通化することで量産効果を発生させ、部品の精度と質を落とすことなくコストダウンに成功しています。
Ⅱ.ステンレスフレームに組み込まれた、新開発の磁気回路
MIMを用いて成型されたMC Xシリーズのステンレスフレームには、先代のQシリーズを凌ぐ新型のMC用磁気回路が固定されています。この新たな磁気回路は、近年の加工技術の進歩により部品点数を減らすことに成功し、構成部品の一体化と高精度化をさらに一歩進めました。その結果、磁束密度の分布がより均一になるという成果を得ています。これはつまり、磁気回路を組み上げる際の組立精度が格段に向上することを意味します。磁気回路や振動系の組立精度はカートリッジのチャンネルバランスや再生音の定位感に大きく影響するため、高水準で保たれるべきであることは言うまでもありません。こういった努力の積み重ねは一見すると地味で目につかないところではありますが、これこそは「オルトフォン・タイプ」の磁気回路を開発した我々だけに可能なことであり、今後も取り組み続けねばならない課題でもあります。
Ⅲ.特徴的なシェイプをもつ、デンマーク・デザインのボディハウジング
先に述べたとおり、MC Xシリーズでは天面まで一体成型のステンレスフレームを新たに採用しました。このフレームを下から覆うブラックのボディハウジングもまた、本シリーズの大きな特徴です。ヘッドシェルに接するトッププレートから針先方向へと向かうにつれて狭まってゆく特徴的な形状は、上位モデルのMC Cadenzaシリーズやその祖となったMC Jubileeから範を得たものです。これにより、針先先端方向(カートリッジ底面側)の実効質量を小さく(軽く)することを可能とし、カートリッジが音溝をトレースして動作する際の質量バランスを最適化しています。質量計算から導き出された最適解と、シンプルでモダンなデンマーク・デザインの融合。この形状は、「用の美」にも似た必然によって生まれました。
Ⅳ.全モデル共通の高純度銀コイルワイヤーと十字型アーマチュア、専用ダンパー
MC Xシリーズでは、マテリアルのコストを度外視して全モデルに高純度銀線のコイルワイヤーを使用しています。音声信号の伝送速度が最も速い銀(Ag)は、信号劣化も最小限で済むため、微弱信号の伝送には極めて理想的な金属導体であるといえます。このことから、オルトフォンは古くからこの素材をカートリッジの発電コイルワイヤーや、リードワイヤーを含むオーディオケーブル、シングルBAイヤフォンのドライバー用コイルなど、様々な製品に用いてきました。MC 10・20・30シリーズにおいても、かつての初代MC30やSuperシリーズ、至近ではMC Q10に銀線を用いるなどしており、そのクオリティは折り紙付きです。この高純度銀線コイルワイヤーは軽質量な十字型のアーマチュアに巻き付けられており、さらにその背後にある各モデル専用のダンパーゴムのはたらきによって、振動系は適切に支持され、また不要共振の制動も行われています。
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仕様
●出力電圧 (1kHz, 5cm/sec.): 0.4mV●チャンネルバランス (1kHz): 0.5dB
●チャンネルセパレーション (1kHz): 24dB
●周波数特性 (20Hz-20,000Hz): ±2dB
●水平コンプライアンス: 13μm/mN
●スタイラスタイプ: Elliptical
●スタイラスチップ半径: r/R 8/18μm
●カンチレバー素材: アルミニウム
●適正針圧: 2.0g
●コイル線材:高純度銀
●内部インピーダンス: 6Ω
●推奨負荷インピーダンス: 50Ω以上
●自重: 8.6g
●JAN:5705796271287